龍谷大学 理工学部 物質科学科 河内研究室

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〒520-2194
滋賀県大津市瀬田大江町横谷1-5 龍谷大学 先端理工学部
応用化学課程
河内岳大

瀬田学舎1号館2階203研究室(1-203)

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研究内容:分子を精密につなげる

 当研究室では、機能構築の最小単位である原子・分子を精密に連結する技術(精密重合、有機・無機合成)を駆使して新しい高分子材料を開発しています。これまでに進めてきた研究のいくつかを紹介します。

一次構造を制御したPMMAのらせん構造形成による機能発現

 ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は汎用の合成高分子であり、その高い透明性と耐衝撃性から、家庭向け水槽やシーリングライトの保護カバーなどとして我々の身の回りで広く用いられています。私たちは、一次構造制御により二次構造(らせん構造)までを制御することで、PMMAであっても、自己組織化、分子配列、分子包接、サイズ識別、光学活性、光学分割などの機能を発現することを明らかにしました。

【st-PMMAらせん構造によるフラーレン類の選択的包接】
 立体特異性リビングアニオン重合により一次構造を制御したPMMA(st-PMMA)が形成するらせん構造に着目したところ、その内孔にフラーレンを取り込み、結晶性の包接錯体を形成することを見出しました(図1)。また、様々なサイズのフラーレン(C60、C70、C84)を包接するだけでなく、異なるサイズのフラーレンが共存する場合にはサイズ識別能を発現することを明らかにしました(C60/C70混合物ではC70が優先)。これは、st-PMMAのらせん構造がゲスト分子に応じでフレキシブルにその内孔空間を変化させているためであり、「らせん構造」特有の機能と考えられます。このサイズ識別能を利用して高次フラーレンの選択的抽出にも成功しています。

図1. st-PMMAのらせん構造によるC60包接の模式図.


【PMMAのらせん構造制御】
 らせん高分子の重要な機能として筆頭に挙げられるのは、巻き方向(右巻き、左巻き)に起因したキラリティです(図2)。st-PMMAのらせんの向きを制御できれば、安価な光学活性材料としてだけでなく、分子包接能にも起因する複合的な機能の発現が期待できます。私たちは、キラル化合物を共溶媒として用いることで巻き方向を制御したst-PMMAが安定な光学活性ゲルとして得られることを見出しました。光学活性ゲルにフラーレンを添加すると包接錯体を形成し、包接されたフラーレンに円二色性が観測されることから、ゲスト分子にキラルな「場」を提供できることも示しました。この光学活性st-PMMAを用いて、フラーレン煤からの高次フラーレンの抽出を行うことで、C96以上の高次フラーレン類の光学分割にも成功しました。

図2. らせん構造によるキラリティ.

分子ユニットの精密配列による界面機能の誘起

 枝分かれ構造は単純な一次構造ですが、その始点を決めることができれば、構成単位の空間濃度分布にベクトルを与えることになり、高次構造制御に直結しています。私たちは、レドックス活性であるビオローゲンを樹状に連結した骨格の頂点部または縁部にメルカプトデシル基を導入し、それらのAu上への自己組織化を利用することで、分子の濃度勾配を精密に変化させた傾斜構造を導入した新しい金属/有機分子接合界面を作製しました(図3)。現在、傾斜配列に基づく電子輸送制御について検討を進めています。

図3. ビオローゲン樹状配列分子により得られた単分子膜の模式図.

構造制御よるネットワークポリマーの高機能化

 線状ポリマーの一次構造制御に比べ、ネットワークポリマーは重合の進行に伴い不溶化するため、その構造制御は極めて難しくなります。新規なフェノール樹脂であり、複合材料のマトリックスやプリント基板としての利用が期待されているポリベンゾオキサジン(PBZ)の構造制御にも取り組みました(図4)。例えば、液晶メソゲンを分子骨格に導入し、外部刺激によりメソゲンを配向させることでネットワーク構造を制御したPBZについて研究を進めています。また、ビニル基などの架橋性官能基の導入やピリジル基による水素結合の増加などにより架橋密度をコントロールし、耐熱性の向上したPBZも開発しました。さらに、ポリシロキサンや液状ゴム、イオン液体などとのハイブリッド化についても検討し、プロセスを工夫することでガラス転移温度ならびに弾性率を低下させることなくPBZを強靭化することにも成功しました。

図4. ポリベンゾオキサジンの合成スキーム.

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