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研究内容

概要

人類の社会活動の急拡大により、21世紀の科学は医療、エネルギ、食糧あるいは環境といった複雑かつ多様な課題への対応を迫られています。
一方、生物は長い進化の過程で、高効率•高選択的な生化学連鎖反応システムの獲得に成功ました。持続可能社会を迎えるあたり、精緻な生物機能の理解と活用により環境低負荷材料を開発することは意義があると考えます。
当研究室では、分子設計および化学合成が可能なペプチドなどの生体分子を基体とする革新的材料創製を行います。

ペプチド集合体を鋳型とするシリカナノ構造体の合成


 珪藻や海綿等の生物は、シラフィンやシリカテインといったタンパク質を鋳型として、バイオシリカとよばれるアモルファスシリカを形成します。これらは生体組織の骨格として柔軟、軽量、強靭な性質をもち、それらの構造はナノレベルで緻密に制御されています。しかし、生物がバイオシリカ合成に際し利用するタンパク質は調製や取扱いが煩雑であるため、バイオシリカの特長をナノテクノロジーへと応用展開するためには、代替となる鋳型物質の獲得が急務と考えられています。そこで、富崎研究室では、タンパク質の代わりに自己集合化能を有するペプチドをバイオシリカ合成の鋳型とする新規シリカ構造体合成法の開発を試みています(図1)。

 まず、ペプチドの設計では、ペプチドがβ-シート構造を二次構造とするファイバー状集合体を形成するように、親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸を交互に配置した両親媒性のアミノ酸配列としました。また、シリカとの複合化のために、水酸基側鎖を有するトレオニンを親水性面中央に配置した9残基からなる短鎖ペプチドを設計しました(図2)。 透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果、RU-019は水溶液中において良好にファイバー状集合体を形成することがわかりました(図3)。そこで、RU-019で作製したナノファイバーとシリカ源であるテトラメトキシシランを反応させたところ、ペプチドファイバー周囲が選択的にシリカで被覆されていることが確認できました(図4)。また、得られたペプチドーシリカ複合体を焼成し、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)観察したところ、ファイバー状のシリカ構造体(シリカナノファイバー)の合成に成功しました(図5)。 以上の結果より、ペプチド集合体を鋳型として、シリカナノ構造体を合成することが可能となりました。今後は、これらを触媒反応場へと応用したいと考えています。

silica2
【参考文献】
Tomizaki, K.-Y.; Ahn, S.-A.; Imai, T. “Synthesis of Silica Nanofibers Templated by Self-Assembled Peptide Nanostructures” submitted.

ペプチドによる炭素材料の機能化と応用


 カーボンナノチューブ(CNTs)は、グラフェンとよばれる炭素六角網面がナノメートルオーダーの直径の円筒形に丸められた中空の管(チューブ)です。優れた物理的、機械的特性を示すことから、エレクトロニクスからエネルギーまで広範な分野への応用が期待されています。しかし、CNTsを材料として用いる場合、水溶液等溶剤中への分散性が乏しいことが障壁となっています。そこで、富崎研究室では、CNTsの特長的な性質を損なわないように水溶液中へ分散化させるために、ペプチドを用いたCNTsの物理的修飾法の開発を試みています。また、バイオセンサーへの応用を指向して、ペプチドを介したCNTs表面へのタンパク質の固定化も併せて試みています(図1および図2)。

 まず、ペプチドの設計では、ペプチドがβ-シート構造を形成したときに両親媒性となるように、親水性アミノ酸とCNTs表面と親和性の高い芳香族側鎖を有するアミノ酸を交互に配置した短鎖の9アミノ酸残基としました。また、CNTs表面へのタンパク質固定化のために、ペプチドN末端にビオチン基を結合したRU-036および対象化合物としてアセチル基を結合したRU-035をそれぞれ設計・合成しました(図3)。 透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果、どちらのペプチドもCNTsを水溶液中に良好に分散化することがわかりました。また、抗原抗体反応を利用して、金ナノ粒子で標識した抗ビオチン抗体のCNTs表面への固定化を試みたところ、RU-036で分散化したCNTsには多数の金ナノ粒子が確認されたのに対して、RU-035で分散化したCNTsでは金ナノ粒子はほとんどみられませんでした(図4)。 以上の結果より、ビオチン化ペプチドを用いて、CNTsの物理的修飾と分散化が可能であり、ビオチン基を介する選択的なタンパク質固定化が可能となりました。今後は、これらをバイオセンサーへ応用したいと考えています。

carbon2
【参考文献】
Tomizaki, K.-Y.; Kurosawa, T.; Kajiyama, M.; Imai, T. “Noncovalent Modification of Carbon Nanotubes with Proteins via Biotinylated Peptides Having a Binary Pattern within the Sequences” Chem. Lett. 2012, in press.

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