研究観 学問は歴史、後世に受け継がれる知的財産をつくりだし、歴史のバトンをリレーしよう
ジ ベ ン ゾ [ g , p ] ク リ セ ン

多環式芳香族炭化水素(PAHs)は、革新的な有機材料になり得るとして期待されています。共役系の伸長に伴って発現する物理化学的な特質が、従来にはない画期的な材料開発につながると見込まれるからです。けれども、PAHsを純品として作ることは、とても難しいことが知られています。仮に市販されていても大変高価です。新素材創出の観点から、有機合成の力による物質供給とそれにまつわる合成化学・基礎化学の進展が求められています。
PAHsの中でも、比較的小さな六環性の縮環分子であるジベンゾ[g,p]クリセン(組成式C26H16・dibenzo[g,p]chrysene、以下DBCと略記)は、合成が簡単そうに見えて、実際はとても作るのが難しい化合物として有名です。DBCの最大の特徴は、その非平面性π共役構造です。分子内の1位水素と16位水素・4位水素と5位水素・8位水素と9位水素・12位水素と13位水素、それぞれの立体反発に起因した非平面性π共役系が、DBC全体にユニークな特質を付与しているといわれています。この非平面性の影響を受けた物理化学的性質を用いて、未来のオプトエレクトロニクス材料として利用できるのではないかと、大変有望視されています。そのため、近年になってDBCの化学構造が学術分野において散見されるようになりましたが、報告例は未だ少なく、DBCの反応性そのものに関する知見や誘導体の構造例も僅少です。わからないことをたくさん残しているのがDBC分子です。安く大量に、安全かつ高品質に、そして多種多様にDBCを合成することができれば、バックミンスターフラーレンやカーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンナノリボン等、いわゆる分子ナノカーボン材料分野への波及効果だけでなく、合成化学や材料科学の分野全体との関連において、意義深い分子化学を展開できると思われます。

“Regio-defined multi-hydroxylation of Dibenzo[g,p]chrysene.”
N. Yoshida, T. Iwasawa et al, Tetrahedron Letters 2020, 61, 152033.

“Straightforward Synthetic Routes to Well-Solube and Regio-Defined Dibenzo[g,p]chrysene Derivatives.”
N. Yoshida, T. Iwasawa et al, Tetrahedron Letters 2020, 61,152406.

“Regio-Defined Syntheses of Tetra-Brominated Dibenzo[g,p]chrysene Scaffolds with High Solubility.”
Y. Fujii, T. Iwasawa et al, Tetrahedron Letters 2021,62, 152758.

過 去 の 成 果
キ ャ ビ タ ン ド
君 も 医 薬 に 貢 献 す る 有 機 合 成 を ! ! (各研究内容をクリックすると詳しい内容を見れるよ!)

【研 究 内 容】
①キャビタント触媒を使って、グリーンケミストリーを実現したい!
【背景】人間の体や自然の世界には「
酵素」という触媒が存在し、有機化合物を体内や生体内で合成して、様々な生命活動を行います。その多くは、環境に優しい合成をします。これは酵素が疎水性ポケットを作って基質の一つ一つを精密に認識して活性化するからです。けれども、合成化学者は酵素のような精緻な触媒を、まだまだうまく開発することが難しい状況です。

【我々の戦略】人工的に作った疎水性ポケットの中に、触媒反応を行うことができる遷移金属を一つまたは二つ配置した新しい合成触媒の開発に我々は既に成功しました。これを使ったグリーンな化学反応を実現する作戦を取っています。

【実際の進捗】人工的に作った疎水性ポケットの触媒活性をどうすれば高めることができるか、について研究を続けています。また、より一層グリーンな触媒反応を達成するにはどうすれば良いかについても、取り組んでいます。

ユニークさを追究したい!という人向けのテーマです。
四 置 換 ア ル ケ ン
(三原反応、矢内反応、新矢内反応、遠藤4置換合成法)
四置換アルケンをもっと簡単に作れるようにして、その可能性を広げたい!
【背景】四置換アルケン分子は、有機医薬品のみならず材料化学において重要な役割を果たすことが知られています。けれども、「安く大量に安全かつ高品質に」作るための方法が無いため、その可能性はまだまだ拓かれていません。

【我々の戦略】アルキンの三重結合に対して選択的にハロゲン元素を取り付ける方法を、既に我々は見つけました。これを使って、四置換アルケンを自在につくる作戦を取っています。

【実際の進捗】その過程でβ-ハロゲン脱離という大きな壁にぶつかりました。現在はこれを乗り越えるために日々努力しています。

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