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研究設備

X線光電子分光装置 (XPS) (アルバック・ファイ製 ESCA-1600R)

原子を構成している電子は、原子核から一定の強さで束縛されています。電磁波であるX 線を試料に照射したときに試料の原子から放出される電子を『光電子』といい、この光電子の運動エネルギーE は、
E=(X 線のエネルギー: 一定)?(束縛エネルギー: 結合エネルギーEb)
になります。束縛エネルギーは、原子の種類と電子の軌道により定まった値になります。これにより水素とヘリウム以外の全ての元素の定性 (何が) ・定量 (どれだけあるか) 分析ができるだけでなく、それらがどのような化学状態で存在しているかを同時に迅速に調べることができます。

X線顕微鏡(HORIBA製 XGT-2700)

X線顕微鏡は、X線管で発生させたX線をX線導管を用いることで微細なX線束に絞り、試料上を走査しながら照射することによって点分析測定と面分析(マッピング)を行います。試料の透過像は、試料を透過した蛍光X線をSi半導体検出器で検出します。X線導管は、中空のガラス管の内部の全反射を利用して、X線の強度を落とすことなく伝えるものです。このXGTの出射端を絞ることにより、輝度の高いマイクロX線ビームを試料に照射させ、微小部の分析が可能になります。また、カラーマッピング機能も搭載しており10 mm × 10 mm程度のミクロ領域から10 cm × 10 cm程度のマクロ領域までの元素分布をカラー画像として、二次元表示することができます。

可搬型蛍光X線分析装置

従来の波長分散型蛍光X線分析装置は、高電圧大電流のX線発生装置に水冷式冷却装置がついた大型装置が主流でした。ところが、半導体検出器の進歩とX線発生装置の空冷化により10年ほど前から卓上型が普及しましたが、半導体検出器に液体窒素を必要とするため持ち運びが困難でした。ペルチェ式で電子冷却する超小型半導体検出器が開発されたことで、装置が大幅に小型化され持ち運びに関わる問題が解消されました。これを可搬型蛍光X線装置と呼びます。こうして波長分散型蛍光X線分析装置の野外への持ち運びが容易にできるようになり、火星での分析や環境試料、文化財の非破壊分析などが可能になりました。

紫外・可視分光光度計(SHIMAZU製 UV-3600)

紫外線・可視光領域の光が物質を通過するとき、光のエネルギーによって物質の電子状態に変化を起こし、光のエネルギーの一部を失います。この減少を吸収といい、失う光エネルギーはその物質の電子状態に対応しています。そこでどういう波長の光によって変化が起こっているかを調べるため、光の波長を連続的に変えながら試料に照射し、試料に入る前と出た後でどれだけ光が吸収されたか (吸光度) を測定します。紫外線および可視光領域に現れる吸収スペクトルは分子の電子状態に関する情報を与えるので、分子の構造を知る上での重要な手がかりになります。

電気化学計測器 (北斗電工製 HSV-100)

電気化学測定とは、電極での酸化還元反応を利用して、溶液中に溶けている溶質の電気化学的特性 (酸化還元電位など) を調べる測定法です。
その電気化学測定法のひとつにサイクリックボルタンメトリー(CV) があります。CVは電極に電位を印加、掃印したとき、電極に流れる電流を測定します。電極表面で酸化還元反応が起こると、電流値が大きく変化することから、溶質の電気化学的特性 (酸化還元される電位など) を知ることができます。

赤外分光計(HORIBA製FT-710)

物質に赤外光を照射すると、分子結合における伸縮振動および変角振動の振動数と同じ振動数の光が選択的に吸収されます。また、分子中の官能基はほぼ独立した基として振動しているので、官能基に特有な振動数をもつ吸収ピークがスペクトルに現れます。よって未知化合物の振動数をさまざまな既知構造の振動数と比較することにより、分子中にある官能基を同定し、さらに分子全体の構造を推定することができます。

高速原子衝突質量分析計 (FAB-MS) (日本電子ハイテック製 MS600)

FAB-MSはイオン化した分子の分子量を測定する装置です。
高速に加速したArまたはXeなどをマトリックス(低揮発性有機溶剤) に混合した試料に衝撃させることにより、気化とイオン化を同時に起こさせます。次にイオン化した試料を電場や磁場を利用して質量ごとに分離し、イオン検出器により検出します。FAB法は、難揮発性試料の質量分析に用いられています。FAB-MSは物質の構造を推定する上で重要な情報を与えてくれます。

磁気天秤(Sherwood Scientific製MSB-AUTO)

磁気天秤は物質の磁化率を測定する装置です。
あらゆる物質は磁場の中に置かれると何らかの影響が現れますが、特に不対電子をもつ物質はその影響 (磁化) を強く受けます。磁化される度合い『磁化率』は物質ごとに固有であり、遷移金属錯体の磁化率を測定することによりその中心金属イオンの酸化数、軌道の分裂のようす、不対電子数などを推定することができます。

元素分析(yanaco製CHN-CORDER MT-5)

元素分析は、物質を構成する元素の比率を決定する手法です。炭素・窒素・水素などを含む測定試料を高温に加熱することにより、炭素はCO2、窒素はNOx、水素はH2O に酸化されます。これをCu存在下で加熱すると NOxが還元されてN2 になります。このCO2、N2、H2Oを定量することによって、それぞれの元素の比率が決定できます。

核磁気共鳴装置 (NMR) (Bruker製 DPX-400)

核スピンを有する1H核や13C核を非常に強い磁場中に置くと、2つのエネルギー準位に分かれます。これに磁場をかけたまま電磁波 (ラジオ波) を照射すると、ある周波数でエネルギーの吸収が起こり、少し過剰に存在する低エネルギー側の準位から高エネルギー側の準位へ遷移が起こります。これを共鳴吸収あるいは共鳴が起こると言います。共鳴によって生じた振動磁場の強さを検出することでスペクトルが得られます。HやCは有機化合物の最も主要な構成元素であり、両者のNMRを測定することにより、構造に関する情報が非常に多くかつ簡便に得られます。

X線結晶構造解析装置(理学電気工業製)

単結晶にX線をあらゆる方向から照射したときの回折現象を利用して分子の構造 (構成原子間の全ての結合距離と結合角) を決定する手法をX線結晶構造解析といいます。原子間距離や結合角のほか、各原子の有効電荷、結合電子や孤立電子対の分布も知ることができます。非常に多くの構造に関する情報が得られるため、複雑な構造をもつ分子について議論する際には特に重要な役割を果たします。

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