研究の概要 |
【緒言】本研究室は高分子の合成から分子構造の解析まで幅広く研究を行っており、主な研究課題は以下の2つである。 【ゲルの架橋点構造と相構造】ゲルは三次元ネットワーク構造によって溶媒分子が系中にトラップされたもので、ハイドロゲルは多方面に応用されている。本研究室では、ゲル構造の基礎研究としてポリオレフィンを有機溶媒から作成したゲルの凝集構造を振動分光、固体高分解能NMR、熱分析を中心に解析を進めている。結晶性高分子であるsPSやアイソタクチックポリスチレン(iPS)では架橋点として結晶が形成されているが、ベンゼン環のまわりに乱れた構造をとり、バルク結晶とは異なることを報告した。またアタクチックポリスチレン(aPS)はバルクでは非晶性であるため、ゲル化の要因解明がなされていなかったが、aPS/CS2ゲルの低温赤外測定でコンフォメーションの整列に基づく吸収ピークを確認し、ゲル中でも分子鎖の秩序構造が形成されることを明らかにした。 【生体触媒を用いた高分子合成】生体触媒である酵素を用いた高分子合成は金属触媒を使用しない環境にやさしい系として近年注目されている。本研究室では主として酵素活性を高めるファクターについて研究を行っている。Candida
Antarctica Lipase B (CALB)を様々なマトリックス上に固定化した固定化酵素によるε-カプロラクトン(CL)の開環重合について検討し、ポリプロピレンなどの疎水性マトリックスが有効であることを報告した。酵素は特定の温度域で活性であり、130℃以上で酵素活性が失われることを見出した。また環境問題に配慮した有機溶媒を使わない超臨界二酸化炭素中で同様の実験を行い、高い反応性を与えるトルエンと同等の酵素活性があることを見出した。この系は有機溶媒からの分離を必要とせずプロセス的にも有効であると考えられる。 【主な解析装置】300MHz固体NMR専用機(ブルカーバイオスピン)400MHz液体NMR専用機(同)顕微赤外分光器(insitu scCO2測定セルつき)(日本分光)DSC(リガク)など。 |